練習問題です。以下のようなスパムメールを受け取りました。ぱっと見は美味しそうな話ですが、どこがおかしいでしょうか? 考えてみてください。 |
-------------------------------------------------------------------- ● 月に60万円で不足ですか? -------------------------------------------------------------------- ある人が商品Bを人に売ると3,000円もらえます。さらに商品Bを売る人(レベル1)を見つけた場合、報奨金として2万円もらえます。さらに、そのレベル1が売った商品に対してもマージンが発生し、1,000円もらえます。また、レベル1の人がダウンにつけた人(レベル2)が売った商品にもマージンが300円発生します。 この時、1ヶ月に一人ダウンをつけることができたとします。また1ヶ月に10個の商品を売ることができるとします。1年間の収入は以下のようになります。
商品の販売に対するマージン・・・3,000(円/個)×10(個/月)=×12(ヶ月)=36万 |
Q.
この話のどこがおかしいでしょうか?
まず、2000年1月に事業を開始したとします。毎月一人ずつダウンを見つけたとして、1年後は12人のダウンがつきます。これは事実ですが、12番目にレベル1になった人は、2000年12月末にダウンに着いたばかりですから、2000年度は全くレベル2を作れていません。だから一月目はおろか、1年後でも上記のようなシュミレーションどおりにはいきません。
純粋に事業を開始して1ヵ月後の収入をシュミレーションしてみましょう。
商品の販売に対するマージン・・・3,000円×10個=30,000円
・2ヵ月後の収入シュミレーション
・3ヵ月後の収入シュミレーション
・4ヵ月後の収入シュミレーション
・5ヵ月後の収入シュミレーション
と、以降、Nカ月目(N>2)の場合、(4.3万+5500N+1500N2)円となります。つまり、最初の1年目の収入は
つまり1年目の平均月収は約16万になります。
このように60万には程遠いことになります。初めて月収60万を手にするのはうまくいって18ヶ月後です。多くの人がはじめて5ヶ月もたって10万そこそこの収入に、焦りを覚え、脱落していく人が出ても不思議ではありません。また、このシュミレーションではダウンの人も均等に意欲的にそのまたダウンをつっくっていくことを前提に考えています。
そして、このシュミレーションの嘘の二つ目は、日本の人口が無限にあるようなシュミレーションであること。これは商品は違っても、またシステムが多少違っても、ネットワークビジネスといわれる商法に共通する問題です。つまり、こういうことです。 2000年1月にビジネスを始めたとして、
毎月一人が一人を紹介するというわけですから、Aさんを頂点とするピラミッドからなる総会員数は、出発地点で1、1月末に2、2月末に4、3月末に8となっていきます。つまり、12月末には、212=4096人となります。
別の角度からこの数字を考察してみましょう。
# 2000年1月に入会した人物(レベル1)によって2月に会員になった人物(レベル2)が2000年3月期から活動して10人の会員増。
以下、計算が煩雑になりますので、結果だけ示すと
1年後のレベル4の人数・・・・・・495人
1年間に合計4095人の会員がAさんという一人の人間から入会することになります。この数字に自分自身を入れれば、Aさんという人間からなるピラミッドは頂点を含めて4096人となり、最初の数字と合います。
また、仮にこのネットワークビジネスの(日本における)創始者が1年前に始めたものであるとし、その創始者から見てAさんがレベル6に属しているとするなら、上記の計算例によりAさんのようなレベル6(創始者から見た絶対的なレベルです)が924人いることになります。そして、この約900人から1年後には約4000人(レベル1からレベル12の合計。創始者から見た絶対的なレベルで言えば、レベル7からレベル18)がそれぞれ会員になるのですから、900×4000=3,600,000となり360万人が日本に会員としていることになります。ここまで来るのに2年しかかかりません。
この360万人が翌月それぞれ一人づつ会員を増やしたとすると、2001年1月末に総会員数は約720万。2月末には1440万人。3月末には2880万人。4月末には5760万人、となります。このビジネスシステムは、非常に短期に崩壊するのが分かります。しかも、肝心の商品を買ってくれる人も必要ですから、おかしいのです。
もちろん、「1ヶ月に一人の会員を獲得できるというのは単なるシュミレーションであり、本人の努力次第であって、みんながみんな獲得できるわけではなく、したがって、このビジネスシステムの崩壊は計算が示すように早期に現れたりはしない。でも、あなたなら出来ますよ」と言われたら、調子に乗ってやりたがる人もいるかもしれませんが、「自分は勝ち組になるけれど、私が紹介する人は失敗するかもしれない。正直、こいつは人の心をつかむのが上手でない。きっと失敗するだろう。だけど、こいつだってこんなに喜んでいるのだから、わざわざ水を差す必要もなかろう。そうだ、そうだ、俺は嘘は言っていない。この収入例はシュミレーションだとちゃんと言っている。向こうが勝手に稼げると思っているのだから、俺の知ったことではない。俺は無理強いはしていない」などと自己正当化を繰り返して、人に勧めて良心の思いに背いてまでやるのは、どうかと思われます。
また、1ヶ月に一人の代理店獲得というのを2ヶ月に一人の代理店獲得とすれば、このビジネスシステムの崩壊は多少は遅くなりますが、それだと、月収60万を実現できるのもそれだけ遅くなってしまいます。さらに、このシュミレーションでは煩雑さを避けるため、代理店になるための加盟金は考慮に入れませんでした。しかし、もし、加盟金を考慮に入れるなら、月収60万を実現できる日はそれだけ遅くなりますし、それどころか加盟金さえも回収できないようになる人も出てくるでしょう。そもそも、いつ参加し人でも儲けられるのなら、何でスパムメールでは「上陸直前」だの、「今加入しないと損」みたいなことを言うのだろうか? 「今加入しないと損ですよ。あなたの後から入る人は損をするかもしれないけど、くれぐれも言いますが、私はあなたに損はさせないからこそ勧めているのです」とでも言うのだろうか? 私のあとに入ってくる人が犠牲になってもいいというのでしょうか?
もちろん、私もマルチ商法・ネットワークビジネスの全てを否定するわけではありません。ダウンの収益の一部を得るというのは合理的な考え方です。例えば、レベル1の人が商品を10個売った。その人が売ったことに変わりはありませんが、その人が商品を売り、会社に儲けさせてあげることができたのは私がいたからであるということで、つまりマージンの分配を単純に売った人に、例えば15%挙げるのではなく、売った人Aさんに10%、その人を紹介した人Bさんに3%、そのBさんを紹介した人Cさんに2%配分するということですから、これは利にかなっているように思います。
ただ、過剰な代理店獲得奨励金や、ダウンにある代理店の売上に対するハイりターンが設定されているビジネスモデルですと、商品を売ること以上に、皆が代理店獲得に旨味を見いだし、誰も商品を売らなくなることから問題が発生します。一番楽なのは、自分がつけたダウンの一人でもいいので、無茶苦茶頑張ってくれて、後は印税的にお金が入ってくるのを待つだけ、という生活ですから、人間誰でも楽したいもの。勢い、代理店獲得活動だけをみなするようになり、短期間のうちに飽和状態となり、末端会員がダウンを見つけれなくなったりします。結局、代理店加盟金がただ上位の代理店獲得奨励金へと吸収され、上位のものだけが潤うことになり、金銭だけを授受するねずみ講と何ら変わらなくなってしまうことが多いことを、ここでは問題にしているのです。
マルチ商法・ネットワークビジネスは人間関係を崩壊させることもあるので注意が必要そうですね。
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